研究コンセプト
医歯系大学の附置研究所として設立された背景を活かし、臨床医との連携を通じて医療デバイスに対する現場のニーズを把握し、材料工学を基盤として、それに応える材料研究・開発に取り組みます。材料開発から医療デバイス応用までを一貫して捉え、形状設計では達成できない性能を材料側から実現することで医療の発展に貢献することを目指します。

研究テーマ1
低弾性率型金属材料の開発と医療デバイス応用
金属材料は骨と比べて弾性率が高く、力学的不整合により臨床上の問題が生じています。そのため、骨に近い低弾性率の金属材料が求められています。しかし、弾性率を下げると、多くの場合、強度や耐久性が低下するため、材料開発上の大きな課題となっています。本研究では、合金組成の設計、相構成や組織形態の制御、製造・加工プロセスの最適化により、低弾性率と高強度・高耐久性を両立する金属材料の開発に取り組んでいます。さらに、材料の弾性率とデバイス全体の剛性とを区別して捉え、力学的に解析することで、デバイス形状を含めた力学的整合性の観点から弾性率の違いが生体に及ぼす影響の解明も目指しています。

研究テーマ2
変形誘起相変態を利用した金属材料の力学機能化
弾性率は材料固有の物性値であり、通常は変形してもほとんど変化しません。本研究では、変形により相変態が誘起され、それに伴い弾性率や強度が変化する金属材料の開発に取り組んでいます。変形誘起相変態を制御することで、外力に応じて弾性率が変化するだけでなく強度を向上させることも可能になります。この特性を活用すれば、必要な部位のみを高弾性率・高強度化する材料設計が可能となり、従来にない力学機能を持つ医療デバイスへの展開が期待されます。相変態の発現に影響する組織因子を明らかにし、力学的特性の精密制御に向けた指針の構築を目指しています。

研究テーマ3
循環器系疾患治療用高性能金属材料の開発と医療デバイス設計
狭心症や心筋梗塞といった循環器系疾患は、心臓付近の血管が狭窄し、血流が悪化することで生じます。ステントは血管狭窄部に挿入し、内側から血管内径を拡張することで血流を回復させる金属製の網目状のデバイスです。ステントプラットフォーム材は高強度・高延性・優れた耐食性・生体親和性を共立している必要があります。本研究では、ステントの小径化を実現することでステント挿入時の患者の負担を軽減できるだけでなく、医師がステント留置術を行う際の操作性も向上させることができると考え、合金組成設計、加工熱処理による組織制御、ステント構造の力学的評価と最適化を行うことで患者・医師双方にやさしい小径ステントの開発を目指しています。
研究テーマ4
生体内崩壊性複合材料の開発と医療デバイス応用
現在実用されている多くの金属製生体材料は、優れた耐食性を有していることから、一度体内に埋入すると疾患完治後も半永久的に体内に残留してしまい、その後のMRI等の画像診断において正確な診断を妨げる要因となります。本研究では、生体内環境で腐食しやすく、かつ生体に対して毒性を示さない金属材料と骨形成誘導能を有するセラミック材料を複合化することで、優れた機械的強度と適度な腐食速度を両立し、さらに疾患の治癒を促進することができる「生体内崩壊性金属-セラミック複合材料」を開発するとともに、骨折固定材等の医療デバイスへの応用を目指しています。
